鳩の鋳造

塔柱につけられていた、鋳物の「つがいの鳩」4か所のうち3か所が欠落したままになっていました。
2021年、塔の足元を掘り下げ、周辺の整備を行うのにあわせて、これらの欠落した鳩を補充して当初の姿を再現する事業を、当実行委員会で進めました。

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平賀金属工業株式会社

鋳造作業は、「広島銅合金鋳造会」のメンバーであった故平賀繁彦氏の子息である平賀哲朗氏(平賀金属工業株式会社代表取締役)が引き受けてくださいました。

製作にかかる費用は、ご協力いただける方からの協賛金でまかなうこととしています。

平和の鳩協賛のお願い

実行委員会では鋳造までを行い、鳩本体を広島市に寄贈したうえで、塔柱への取り付けは広島市においてやっていただく予定です。
以下、その記録です。

原型提供:松村伸吉
鋳造:平賀金属工業株式会社

鳩三つがい失踪

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残された一つがい

塔柱の目の高さより少し上のところに、銅合金で鋳造された「つがいの鳩」が取り付けられているのが見えます。
郷土の著名な日本画家・片田天玲画伯がデザインしたもので、鐘本体の表面にも同じ模様が彫られています。塔柱にはもともと4か所取り付けられていましたが、現在はこの南面の一つがいだけが現存しています。

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失踪した跡

ほかの3か所には、各2本のボルト穴だけが残されていました。
長い間にボルトが腐食して、抜け落ちたものと思われます。

保存されていたサンプル

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鳩のサンプル

鐘を寄贈した「広島銅合金鋳造会」の会長だった故松村米吉氏(1993年に82歳で死去)の子息である松村伸吉氏の手元に、当時鋳造された鳩が残されていました。サンプルだったらしく、多少の鋳造ミスや整形もれ、細部の欠け落ちなどがみられましたが、これをもとに原型を制作すれば、あらためて3つがいの鳩を再現することができます。
松村伸吉氏の了解のもと、保管を託していた広島市公文書館を通してこのサンプルを借り出し、型をとることとしました。

広島の「平和の鐘」2代目の模様 被爆金属のハト後世へ(中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター)


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新しく整形した原型

サンプルの不具合を慎重に直して整形した原型を作成しました。バリ*がなくなり、折れた嘴が元に戻り、羽根の模様も繊細になっています。

*) バリとは、溶けた銅(これを「湯」というのだそうです)の注ぎ口や型の縁などに張り出した余分な残留部分のことをいいます。

鋳造

2021年5月17日から24日にかけて、広島県安芸高田市吉田町にある平賀金属工業の工場で鋳造されました。
まずは、整形した原型を用いて山砂で鋳型を作成します。ひとつひとつ、熟練した手作業で進められます。作業をしているのは、1級技能士でケーキ作りが趣味の下谷さんです。

次に、できあがった鋳型に銅合金を流し込んで冷ましてから、鋳型を壊して取り出します。

完成

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できあがった鳩

取り出した鳩から、注ぎ口や周囲のバリなど余計な部分を丁寧に削り取って完成です。
大変な手間をかけて、70年前の造形がよみがえりました。